マツタケの香りの正体は


 30年ほど昔の話ですが、農学を専攻した人が「マツタケの養殖と柿の缶詰は不可能」といっていました。

 なるほど、両方ともお目にかかったことがありません。柿缶なんかどうでもいいけれど、マツタケの人工栽培が不可能なのは、万能へ突進する"経済動物"日本人に、天がアカンベエをしているのかも。ただし、芳香だけなら、とっくに似たものが食品添加物として合成され市販されています。

 あの香りの正体は、昭和11年(1936)に早くも日本の化学者によって突き止められ、C8H16Oというアルコールの一種と桂皮酸メチルが重要な役割を果たしていることが判明しました。天然の(といっても、それしかありませんが)マツタケ10キロ(いったい、お値段はいくらになるのか)から、その芳香物質がどれだけ抽出できるかといえば、なんとたったの3グラム。まさに"秋のダイヤモンド"なのです。

 『鉄道航路旅行案内』大正元年(1912)10月号(大阪・駸々堂)に、福知山線大阪−篠山を運転する「松茸狩臨時汽車と賃金大割引」の広告を鉄道院(いまのJR)が大きく出しています。

 臨時列車を出すほど、やたらとマツタケが生えていたのです。「80年も大昔のことだろう」とおっしゃるかもしれませんが、少なくとも、あのバカな戦争を始めるまでは、京阪神近郊などでは「松茸狩り」なんて、ごく大衆的な秋の行楽だったのですが……。

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