今月の本棚

競馬で財産を築く
「続・100円玉ではじめる
     驚愕の財テク新理論」

杉崎仁志著 
教育メディア社 (190p) 1997.10.13 
1,200円

 
前作の出版は昨96年10月、当初はほとんど反応は無かったという。それが今年の新装版発行と雑誌の紹介で一気に上半期のトップセラーに躍り出ている。表題だけでは分からないが、ただし競馬ジャンルのトップである。競馬本はそんなに部数は出ないが、今日の競馬ブームに乗って、手堅い出版物で雑誌も定期読者をつかまえている。事実、後楽園の場外馬券売り場の側には、ほぼ専門店といっていい本屋が存在する。


エアーポケットのこの著
 
この手の本には時々の流行があり、古くは、まだ禁制に近い時代の入門本、騎手や馬の紹介本に始まり、最近では、競馬本というよりは馬券本が主流で、それもオッズを基にした予想の間隙を突く本、血統によって主としてG(特)を狙う本、タカモト式と称せられる施行者の裏読本、能力値による予想本、昔ながらの出目・語呂合わせ本、ついにパソコンを使った予想プログラムの時代に突入している。

 この著はその古いスタイルをいわば衣替えした、最近ではしばらくなかった確率(統計)を基にしており分かりやすくしかも目新しく見える。この続編は前作に寄せられた疑問に答える形を取っている。

安定したオッズに狙い目
 著者の主張は3点に集約できる。またそれがくりかえし述べられている。長年統計を取れば一着に来る馬の出現率は一番人気の馬36.5%で不変であり、このような上位人気の馬券の確率に合わせて古典的な倍買法(マーチンゲール法)を改良しオッズに合わせた「馬法の方程式」で購入し、それを信じて当たるまで購入を続けることの3点である。

 ラスベガスなどでも必勝法といわれる倍買法は12レース(通常のJRAの一日のレース数)当たらないと、5,000円から出発して最終レースでは掛金は1,024万円必要で、累計2,047万円を超えてしまう。非現実的であり、倍以上の払い戻しでなければ元も戻らない。丁半博打とは異なって競馬では投資馬券のオッズが分かり人気によってそれは変わる。著者の着眼点はそこにある。ただし、現場にずっと居てオッズの最終形を確認しなければならない。

 論法が面白くてあえてとりあげた。普通この種の本は、なぜ確実に儲かるならそれを出版するのかと言う点だ。必勝法があれば一人で儲け続ければよい。論法はこうだ。原点である統計の安定のためには参加者の増加が必要、しかもJRAの場合には、かりにこの本に触発された投資者が大量買いしてもいまの売り上げではオッズに影響は与えない、というわけだ。会員者を結局は最後に募集しているので、いささか鼻白むが、マーチンゲール法以外にこれまでに多くの名のある数学者、統計学者が挑戦した領域に、動くオッズを持ち込んだ発想は確かにユニークといえよう。(修)